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2024年01月28日

共有する不動産を分割する際の手続き No.1,356

おかげ様です。
不動産コンサルティングマスターの村上哲也です。

今日は、at home TIME 12月 No.504からの一部を抜粋しています。
「共有する不動産を分割する際の手続き」
みらい総合法律事務所弁護士 小松恒之


《今回のご相談》
当社でお付き合いのあるAさんは、親の遺産である宅地(1筆)について、十数年前に兄弟であるBさん、Cさんと3人で遺産分割を行い、各3分の1の割合で共有することになりました。その際、3人で
話し合い、以降宅地は月極駐車場として利用されてきました。その後、Aさんは、宅地の所有権を取
得した上で自宅建物を建てたいと考える
ようになり、BさんとCさんに各共有持分を譲り渡してもらえないかと相談しました。しかし、Bさんは考えが異なるため話し合いがまとまらず、Cさんは連絡し
ても返事がなく、話し合いすらできていません。Aさんがこの宅地の所有権を取得する方法はあるのでしょうか。



《回答》
Aさんが、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することで、宅地の共有状態を解消し、所有権を
取得できる可能性があります。ただし、Aさんが希望する全面的価額賠償(後述)で共有物の分割が行
われるかどうかは裁判所の裁量によるため、留意が必要です。



《解説》
1.共有不動産の主な分割方法
共有不動産の分割方法には、大きく分けて、次の3つの方法があります。

❶現物分割(民法258条2項1号)
共有不動産を共有持分の割合に応じて物理的に分割する方法です。
例えば、1筆の宅地を3筆に分筆し、Aさん、Bさん、Cさんが分筆後の宅地につき1筆ずつ所有権を持つというものです。

❷全面的価額賠償(代償分割)(民法258条2項2号)
一部の共有者が共有不動産を取得し、他の共有者の持分に相当する金額を賠償して分割する方法です。例えば、宅地をAさんが単独で所有する代わりに、BさんとCさんの共有持分に相当する金額を、AさんがBさんおよびCさんに支払うというものです。

❸換価分割(民法258条3項)
共有不動産を共同で競売することによって第三者に売却し、その売却代金を分割する方法です。例えば、Aさん、Bさん、Cさんが共同で宅地を競売により売却し、その代金を共有持分の割合で(3分の1ずつ)分け合うというものです。

なお、❶現物分割で共有不動産を分割した場合に、Aさんの得る不動産が共有持分に比べて高額となり、BさんとCさんの得る不動産が共有持分に比べて低額となることがあります。その場合、AさんからBさんおよびCさんに金銭を支払うことで調整する方法(部分的価額賠償)もあります(民法258条4項)。


2.共有物分割請求訴訟を提起するには
⑴提訴するための条件
共有物分割請求訴訟を提起するためには、次の4つの条件を満たす必要があります。
①遺産共有ではないこと(民法258条の2第1項)
遺産共有とは、遺産分割を行う前の遺産を共同相続人が共有している状態です。この状態で共有不動産(遺産)を分割する際には遺産分割協議または家庭裁判所の審判によるべきであるため、共有物分割請求訴訟によることはできません。

②分割禁止の合意がないこと
共有者は、5年を超えない期間内で共有物を分割しないという合意をすることができます(民法256条1項ただし書)。この合意がある場合にも、共有物分割請求訴訟によることができません。

③共有者の全員を当事者(原告または被告)とすること
共有物の分割方法に関する裁判所の判断は、全ての共有者に対して同じ内容であるべきです。そのため、共有物分割請求訴訟を提起するためには、共有者全員を訴訟の当事者(原告または被告)とする必要があります。

④協議不調・協議不能であること(民法258条1項)
共有者間で協議が整うのであれば訴訟による必要はありません。そのため、現実に協議をしても不調に終わったこと、または協議を行うことができないこと(例:協議に応じる意思がないこと、共有者の一部が特定できない・所在不明であること)が要件となります。
なお、これらの他にも、共有状態の属性に鑑みて共有物分割が認められない物(境界標、マンションの共用部分等)や、共有物分割請求が権利の濫用として認められないケースもあります。


⑵裁判所の判断手法
共有物分割請求訴訟では、裁判所は、まず現物分割または(全面的・部分的)価額賠償の採否を検討し、これらが不適切である場合や分割によって不動産の価値が著しく減少するおそれがある場合に換価分割を採用します(民法258条2項、3項)。
現物分割と価額賠償のどちらを採用するかは、共有不動産に関する諸事情(共有不動産の性質・形状、共有関係の発生原因、共有者の数・持分割合、共有不動産の利用状況、分割された場合の経済的価値、分割方法に関する共有者の希望・合理性等)を総合的に考慮して判断されます。そして、全面的価額賠償が認められるためには、これらの事情を総合考慮した上で共有者のうち特定の者が共有不動産を取得することが相当であること、共有者間の実質的公平を害しないこと(⒜共有不動産の価
格が適正に評価されていることおよび⒝取得者に支払能力があること)という
要件を満たす必要があるとされています(最高裁 平成8年10月31日判決)。

裁判所が現物分割や価額賠償を採用できないとして換価分割を採用した場合、共有不動産の競売が命じられることとなります。競売手続が進行すると、買受人が納付した代金が共有割合に応じて割り付けられ、共有者に配当されます。なお、共有者が現物分割または全面的価額賠償のみを希望して共有物分割請求訴訟を申し立てた場合でも、裁判所は、最も適切な分割方法が換価分割であると判断すれば、換価分割を命じることができます。


3.まとめ
Aさんが宅地の所有権を取得するには、共有物分割請求訴訟を提起し、全面的価額賠償による共有物分割を命じた判決を得る必要があります。ただし、全面的価額賠償が認められるためには各要件を満たす必要があるほか、全面的価額賠償が採用されない場合には裁判所の裁量によって換価分割を命
じられる可能性もありますので、こうした点に留意が必要です。




『感想』
ん~、今日の話は、「相続登記をしない、できない」理由のひとつです。
まあまあよくある話です。
その不動産が高額であっても低額であってもです。
令和6年4月1日から「相続登記」が義務化されますが、義務化されたからといって上記のようなパターンや似たような「揉めている」パターンをすぐさま解決させるかというと、解決なんかしませんよね。
相続人との間に「合意」があれば、なんちゃでないんですが、
裁判所がからむと「時間」を要しますからね。裁判所も大変ですが・・・。

だから、不動産の「共有」って、あんまり適さないというか、
なんだか落ち着かないというかねぇ・・・。

共有不動産のご売却でお悩みのかたは、ご相談くださいませ。




写真は、年末年始にインフルエンザに感染してひーひーと寝込む前に撮影した、
とある瀬戸内海の美しい夕陽です。
地元在住だと、その良さは「一回外へ出たり」「歳をとったり」しないと気づけ得ないのかもしれません。



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