2022年08月28日
買主の主張が認められなかった事案 No.1,294
-
おかげ様です。
不動産コンサルティングマスターの村上哲也です。
朝と夕方は、とても過ごしやすくなりました。
ここから、一気に大晦日へ突入していく気持ちです。
決して早すぎではない。あっという間です。
at home TIME 2022年7月号から抜粋しています。
【購入した別荘に瑕疵があるとした買主の損害賠償請求について、
説明済・瑕疵に該当しない等として棄却された事例】
【事案】
買主は、別荘の購入を検討しており平成26年10月、媒介事業者(不動産屋)に依頼し本件不動産を
1時間程度内見し、翌月、媒介業者(不動産屋)の店舗に赴き、売主との本件売買契約を締結。
平成27年1月、引渡しを受けました。
その後、買主は建物に複数の瑕疵が存在するが、特に①1階床下の不良について、少量の降雨でも床下浸水する構造で、建築基準法に反する状態。また、1階リビングにカビが発生し、健康被害ひいては死に至る危険もある。②2階への浸水について、雨水がバルコニー外部に排水されない構造で、木腐れ、鉄部の錆び等の症状が生じている。そのため、不動産屋および売主の告知義務違反があり、売買契約および媒介契約は無効である、などと主張。不動産屋および売主に対し、売買代金相当額および慰謝料等を請求する訴訟を提起しました。
【解説】
裁判所は次のように判示し、買主の請求を棄却しました。
⑴①の1階床下浸水およびカビの大量発生に関しては、買主が本件不動産を購入して平成27年3月に別荘として使用を開始し、同年7月に宿泊した際には、カビの発生は確認できなかった。その後、同年10月に訪れた際、カビが大量に発生しているのを確認したものである。
しかし、同年3月以降降雨があったことは明白であり、同年7月にはカビが発生せず、同年10月にカビが発生したとは判断しがたく、売主が本件不動産を引き渡す直前には、カビ等が大量に発生した様子は全くない点からも、買主の主張を認める理由がない。
なお、床下の構造が建築基準法に反していると主張するが、買主提出の証拠によっても、規定に違反していると認めるに足りない。
⑵②について買主は、2階バルコニーにたまった雨水がバルコニー外部に排水されない構造であったため、周辺部に木部腐れが生じ、浸水したと主張するが、証拠によれば、バルコニーの床面は複数枚の床材が張られており、そこに隙間が見られ、バルコニーに降った雨水の排水先が存在していたことがうかがわれるので、買主の主張は前提を欠く。また、バルコニー周辺の木部が腐り、または塗装が
はがれている状況であることを前提として本件売買契約を締結したので、瑕疵であるということはできない。
⑶その他の瑕疵についても、買主は、本件不動産を内見し、認識していたものの、これを許容して引渡しを受けたというべきであり、築年数に照らしても瑕疵と評価することはできず、本件契約締結時に説明されていたものであって、理由がないため、不動産屋および売主に告知義務違反もない。
従って、買主の請求はいずれも理由がないことから棄却する(東京地裁2年1月9日判決)。
【総評】
不動産の取引において、売主は、情報の公平性の観点から、売主が知る買主の購入に影響する事項について告知義務があり、また、媒介事業者(不動産屋)は、事業者としてできる限りの調査をし、その内容について説明する義務があります。
しかし、売主および媒介事業者(不動産屋)は、建物全体の品質・性能の保証まではできず、購入す
る物件の情報収集は、買主にも責任があると考えられますが、告知事項や説明義務に係る教訓として注意しましょう。
【感想】
まぁ、ブームとかっていったら不謹慎かもしれませんが、
いっときのインスペクションや、瑕疵担保責任からの契約不適合責任だ!みたいな、
報道とか広告とか煽りみたいなものは、ブームが去ったような気がします。
すみません、「ブーム」と表現する、その裏には故意的なものがあります。
たしか、20年近く前?ぐらいに、
「敷金を取り戻す!絶対に!」という会社を作って、
賃貸入居者からの相談に対して、貸主から敷金を取り戻す手続きを代理で行う会社が実在していました。今から考えると、弁護士法違反だと思いますが(笑)。
その当時、試しに、どんなことをしているのか気になったので、
その会社に電話してみたんですね。
そうすると、電話からの声は、イケイケのお兄ちゃんでして、
「ええ!、大丈夫っすよ!!!、あ~、もう取り返しますよ!!!絶対に。やり方ありますから!!!」という感じでした。たしか、こんなふうな記憶がほぼほぼ鮮明に残っています。
第一印象は、「背信的悪意がありますなぁ~」という感じでした。
そもそも、この頃の敷金返還請求が問題となっていた実態は、あまりに法外な金額の敷金が契約時に預けられて、退去時には何の説明もなく、1円も返ってこない、というようなことはいけないよね、というものでした。むやみやたらに、なんでもかんでも故意的に敷金を取り戻す、敷金が全額返還されないのは悪だ!!!というのとはちょっと違うのです。
それから、のっそりと国土交通省がガイドラインを作成して発表しました。
ちなみに、私も、普通に賃貸物件を借りて、数十万円の敷金を預け入れて、退去時(部屋は掃除して、綺麗にして、え?住んでました?という状態までにはした)、1円も返ってきませんでした。敷金の件、また電話するわ、と言われて永遠と電話はきませんでした。その頃は、すでにプロで不動産の仕事をしていましたが、一言も文句をいいませんでした、あえて。
あれれ?、話がだいぶ逸れましたね(滝汗)。
つまりは、買主からすると情報量が少ないから、不利だよね、
だから、売主は真実の告知義務あり、プロの不動産屋は調査と説明義務あり、
というわけだけれども、
言葉はあえて不適切な表現をすると、「ただの文句言い」とか、
「的外れな主張」は、おそらく買主自信が自分の発言がどういったものであるかに気付いていないと考えられるし、
キム兄の「その時の感じでやれや!だいたいでわかるやろ!」とまではいわないまでも(笑)、
築後20年、30年の中古の建造物であるならば、「中古やん、古いやん」というのは受け入れるべき事実であり、おそらく「不動産の買い物、楽しい」からくる期待感から、少々ずれてしまった理想像を描いてしまうのかな、こうであって欲しいし!、なのかな?と考えます。
あれれ???、こんなことを書いていると、誰も私から買ってくれなくなりますよね(滝汗)。
ですので、物件を「内見」する行為というのは、とても重要なのです。
たま~にいらっしゃるのですが、「見んでも、だいたいわかるから、大丈夫、大丈夫」って言われて、「あ~、案内しなくてすむから楽だわ~」と当然思うわけではなくて(笑)、
むしろ注意・警戒アンテナが作動します。ええ。
言い換えると、「内見」をするという行為には、買主にも責任があります。
売主や、ましてや不動産屋は、森羅万象の神ではありませんから、
何もかもを知っているわけではありません。限界があります。
もっというと、「見る」人は、その見方や、見るターゲットや、見た後の印象というのは、
人間だから、人それぞれなのです。
ですので、ここまで書いた内容は、買主への嫌味では当然なくて(苦笑)、
買う時に、気を付けるべきことを大きく分けると3つあります。
①物理的なこと
これは、売主や不動産屋に聞けば、だいたいのことはわかるし、
現場へ行けば、大抵の雰囲気はつかめます。
だけど、もっとより正確な予想ということであれば、
建物住宅診断をしましょう。お金がかかるけど。資格をもって研修をうけた専門家が家をみます。
②権利的なこと
これは、知ろうと思えば、買主個人でも可能です。
役所関係をまわれば判明します。でも、とてつもなく面倒くさい作業だと思います。
これは、不動産屋に聞けばすぐにわかります。
③心理的なこと
ここですね。問題となったり、判断が難しいところは。
いわゆる、簡単に言ってしまうと、「事故物件ですか?」というやつです。
普通は、不動産屋自らは知り得ません(自社売主物件をのぞく)。
基本は、売主へのヒアリングで判明します。
近所の人に聞いて判明する場合もありますが、信憑性への担保がとれません。
売主も、数次相続を繰り返していると、判明しずらいですよね、事例は少ないですが。
ここで売主に「嘘」をつかれると、不動産屋もお手上げです。わかりません。
でも、ここで「嘘」を言える人間は、超絶ド変態です。普通はいません。
これから、不動産を買おうとする方々は、
この①②③を考えてみることがよろしいかと考えます。
って、言いながら、ここまで散々書いといて、
最後は、直感で「ええなぁ~」か否かなんですけどね(苦笑)。
尚、補足ですが、今の「契約不適合責任」という単語の、
前の単語が「瑕疵担保責任」でした。
その「瑕疵」という言葉の意味が、「隠れた」というものです。
ですので、「隠れた傷」って想定しずらいのです。意識の外のものだから。
だって、「隠れている」んだから。
だから、これに責任を負わせるということは、
なかなかの酷さがあるということなのです。
まぁ、なんだかんだ、難しいことはいっても、
不動産の取引とは、等しいものですから、
売主、買主、双方がハッピーになってくれればいいのですけどね。
写真ですが、本文とは全くもって一切関係はございません。
なんというか、トラブルや難しい話なんか一切関係無く、
ただただ「美味い」ラーメンとチャーハンです。
屋島西町のえびす屋さんです。
https://tabelog.com/kagawa/A3701/A370101/37001639/
ものすごく久しぶりに行きました。
スープにコクがあります。脂っこくないのがいいです。
炭水化物?
そうですけど。
どうして、隣の人は「からあげ定食」を頼む確率が高くて、
それを見て「あ~、あ~!」という気持ちにされて店を出ることになるのだろうか。
臨時休業のお知らせ
平素は格別のご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。
誠に勝手ながら、以下の期間を臨時休業とさせていただきます。
■臨時休業期間:2022年8月29日(月) ~ 8月31日(水)
※2022年9月1日(木)より、通常通り営業いたします。
臨時休業期間中に頂きましたお問い合わせにつきましては、
9月1日(木)以降、順次対応させていただきます。
ご不便をお掛け致しますが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
高松市の不動産のあなた様のお悩み「解決」に向けてのご相談は、
まずは村上までメールしてみてくださいね。
https://t-fudosan.com/form.cgi
香川県の「ご売却不動産」随時、募集しております!
賢く高値でご売却されたい方、ご相談くださいませ。
https://t-fudosan.com/form.cgi
【T- 不動産】TETSUのズバリ言うわよ!物件動画はこちらから!
https://www.youtube.com/channel/UCdHGI85wQxnEbULjghN6EJw?view_as=subscriber
#契約不適合責任 #瑕疵担保責任 #物件内見 #物件案内 #高松市不動産売買
#高松市不動産査定 #高松市中古住宅 #T-不動産
トピックス記事
テーマ
- 土地のこと
- 不動産の仕組み
- 税金のこと
- 不動産の取引実務
- 不動産の将来
- ホームインスペクション
- 相続のこと
- 日常の営み
- 法律のこと
- 音楽のこと
- 不動産査定
- 道路のこと
- 境界のこと
- 定期借地
- 収益物件の考え
- 価額のこと
- 空き家問題
- 賃貸のこと
- リノベーション
- 補助金のこと
- 金利のこと
- 物件紹介
- 物件案内動画
- 任意売却のこと
- 競売のこと
- 賢く、より高く売るために
- お金のこと
- 不動産をいかにして選択するか